2015年01月28日

アニメの絵の権利は誰にある?

 先日、とある相談をtwitterで受けました。

 GJ部のアニメのアイキャッチの模写した絵を、地元の展覧会に出したいのだが、よいだろうか? ……という相談です。

 さて困りました。
 新木はたしかにGJ部の原作者ではあるのだが、アニメに関しては、あくまで「原作」という権利ぐらいしか持っていないのです。
 たとえばこの絵の場合には、そのアイキャッチの絵の権利は誰にあるか? ということになります。

 キャラクター原案という意味では、GJ部の小説のイラストレーターである、あるやさんが持っています。
 アニメ版のキャラデザインは、大島美和さんでしょう。
 もちろんそのシーンの原画を描いた人にも、なんらかの権利はあるはずず。
 さらに言うと、個人以外にも、法人にも権利を持っている会社がいくつかあるはず。たとえばGJ部のアニメに関わっている、配給会社、アニメ制作会社、出版社など。
 ほかにもGJ部のアニメの制作費を出資した会社があり、そこもなんらかの権利を持っているに違いありません。

 これら全部が「うん」と言わないと許可が下りないわけです。
 著作権がらみの問題はややこしいのです。

 ちなみにグッズ類の販売などでは、一括して許諾を引き受ける部門がどこかにあります。そこがある程度の独自裁量権を持っていて、いちいちすべての個人/法人に許諾を取ってまわるということもありません。(それでも原作者がいちばん大きな権利を持っているので、原作者のところにだけは、いちおう報告が回ってきます)

 ちなみに「模写」は厳密にいうと「盗作」にあたります。
 地元の展覧会というのが、どの規模のものをいうのか不明なのですが、まともなところであれば「盗作」を認めるはずがないので、そもそも禁止となっているはずです。

 これが小説に関することであれば、わりとどうにでもなるのですけど。
 アニメに関しては、何百人もの人が関わっている仕事なので、勝手に許可とか出すわけにいかないのですよ。

 よって「だめですねー」と大人な返事を返すしかありません。
 このへん事情を察してください。

 よって新木にできるアドバイスとしては、「真央っぽいかんじの、ちっちゃくて元気な女の子」の「オリジナル」の絵を描いて出すのがよいと思いますよー、程度になってしまうわけです。

 幼稚園のお絵描きの展覧会で、アンパンマンの絵を描くのが法的にアウトな社会とか、息苦しくてかなわないと思うんですけど……。
 現在の世の中は、こんなもんです。
 新木は、非営利かつ原著作権を表記しておけば、すべてOKとか、もう法的に認めちゃえばいいと思うんですけどねー。


 余談です。
 そもそも新木に、GJ部のキャラの「絵」に関する権利はあるのか? ――に対する考察です。
 当然のことながら、絵を描いたのは新木ではありません。
 新木は小説しか書けません。新木の作ったのは「キャラクター」です。

 絵に関してはまったく著作権を持っていません。
 では、天使真央という「キャラクター」に関しては、なんらかの権利があるのかというと――。

 そもそも著作権を厳密に解釈してゆくと、「キャラクター」というものに関しては、著者は著作権を持っていないんじゃないか、という話になってきます。
 話の「アイデア」は、じつは著作権の保護対象外だったりします。
 キャラクターもアイデアのうちとみなされる。「よく人を噛む、ちっちゃくて元気な部長」というキャラが他で出ていても、新木はなんら文句を言う筋合いにない。
 そして「名前」もまた著作権で保護されないので、そのキャラが「天使真央」という名前であっても、やはり文句を言う筋合いにない。さらにその部の名前が「GJ部」であっても、やはり同様。

 全部同一だと、さすがに問題でしょうが。

 個々のアイデアだけでは合法です。逆にいうと、一個のアイデア程度で権利を主張されていては、創作活動はなにひとつ行えなくなります。
 ある日クラスに転校生がやってくる展開は、俺が書いたから俺に権利があるとか。異世界に生まれ変わる展開は俺が書いたからとか。活動内容が不明な部というのは俺が考えたのだとか、いちいち皆が権利を主張していたら、誰もなにも作れなくなります。

 著作権で保護されるのは「表現された実体」そのものです。
 たとえば、GJ部のどこか1話を丸パクりして、自分の作品だと偽って発表すれば、これは、即、不法行為となります。
 また丸パクりではなくても、文章が「ほとんど同一」とみなされればアウトです。どのへんまでがセーフで、どのへんからがアウトなのかというと、個別に裁判が行われてみないとわからないところではありますが……
 だいたい漫画の場合だと、「トレース」していると確実にアウト。トレースというのは、元絵を下に置いて線をなぞることですね。
 また模写でもたいていアウト。模写というのは、見て真似たことですね。

 今回の場合には元絵があって、その「模写」なので、これはやっぱり、アウトの領域ですね。
 また上記の通り、新木は「絵」に関しては著作権を持っていない疑いが濃厚です。
 許可を出すとか出さないとか、まったくそういう立場にないわけです。

 このへん、もっとさらに細かく言えば、「小さい背丈と、軽い体重と、ふわふわロングの髪の毛」などを指定したのは新木なので、そこに関してのデザイン上の権利は若干あるのかもしれなかったりしますが……。すごく細かいことですね。
posted by 新木伸 at 13:41| Comment(3) | コンテンツ
この記事へのコメント
模写は盗作なんですね。作品というのは沢山の人が関わっているんですね。全く無知でした。心にとどめます。教えてくださりありがとうございました。
Posted by 及川 at 2015年01月28日 14:09
とても分かり易いです。考察も、案外思いつかなそうな部分まで考えていて、たいへんためになります。
Posted by 旧ニート at 2015年03月17日 22:14
原作とマンガでトラブル
「飴・飴」ってあったような
うろおぼえですみません
Posted by at 2015年12月18日 00:40
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